12/20(土)晴れ

十数年前の今日 F氏は事故を起こした。 飲酒運転だった。


建築士を目指していた彼は 夜に専門学校に通っていた。
独学だった私は、構造力学のテキストを彼に借りたなあ。
パースの描き方とかの話もしたなあ。


恋愛の相談も持ちかけられたなあ。 私がまだ結婚してたころ。
帰る道が同じだったから 彼の愛車のレガシーで家までよく送ってもらったなあ。
頭をアホみたいに短く刈り上げて へらへら照れ笑いしてたことあったなあ。


十数年前の今日 F氏は声を失った。 二度と目を開けることはなかった。
命はとりとめたけど、 もうかつてのFじゃなくなった。 手足は赤ちゃんみたいに曲がっていった。 わずかに開いた目はどこを見てるのかさっぱりわからなかった。


鼻から流し込まれる流動食のおかげで 顔色だけつやつやしていた。
薬品の匂いの立ちこめるICUの白いカーテンの中で、何年何年も彼は同じかっこうのまま眠り続けた。


あんたが眠ってる間に 私は先に建築士の資格もとった。 あんたが眠っている間に私は 離婚して一人に戻った。 仕事も変えた。どんどん変わってしまった。 全部なくしてふりだしに戻った。 


でも私は、ちゃんと生きてるよ。あんたはといえば ふりだしに戻るどころか 二度と帰ってこないじゃないか。 生きていればやり直しはできるのに。
いまだに借りたまんまの 構造力学の本だけ 私の手元にあるわ。 
そんなもん あっても どうしようもないんや。 イラストレーターやしな。 


今F氏が生きていたら 彼はやはり 建築士になってたんだろうか。
by YUKI_GOTO | 2008-12-20 23:59 | 日常生活 my life